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1cmの攻防

by
烏兎@Volksages
烏兎@Volksages

「クリスマスをこの我と共に──」
「ご、ごめんなさい!」


「腹が減っては戦ができぬぅ♪着火だ着火~♪」

「悪はぜーったい、許さないよ!(エピーヌスタンプ打ちながら)」


THE・身内の空気。これを生で聞いているという状況によくわからない感動をピーターは抱いていた。
クリスマスを求めて拒絶される闇吉備津、キノコを燃やし始めるリンちゃん。
シュネーヴィッツェンがエピーヌを目の敵にしているのは、彼女の処のメインであるドロシィが相性上エピーヌを特段苦手とするからで──全一経験者の悲鳴だ。その苦労もひとしおなのだろう。

(正直気持ちは分かる)

悪童もエピーヌは苦手である。内心共感を抱きながら、配置に付いた。
対面は吉備津とデス・フック。端レーンにシュネーヴィッツェンも居る、というかなりサポーターには厳しめの3F編成だ。スキルサポーターでないだけ、ピーターは未だ食らいつける方ではあるけれど──















実際の処、意気揚々と白を背負って出撃したとして──腕が変わるわけではないので。

「い"、っでぇ……今の無理攻め要らなかったかぁ……」

意識は肉体から切り離され、回復まで暫し光と影の世界を漂う。
吉備津とデス・フックから中央手前拠点を強奪しようとしてインプルスゼーレで飛び込んだは良いが、想像以上に吉備津のドローが手痛く、事故死してしまったのだ。
兵士列は闇吉備津の一喝で止まっていた可能性が高く、どちらにせよ要らない必要ではない死。
手前拠点を奪取した事でゲージ差こそ此方の優勢にひっくり返ったが、その差は1cmもない……。

「吉備津を止め──いや」

此方の兵士を倒すことなく特大拠点を殴り始めようとしていたらしい吉備津が、復帰に合わせて帰城した闇吉備津の姿を認めて森に逃げ込んでいくのが見えた。
ゼーレは、摩耗しているが未だ半分くらい残っている。

「──いってきます」

真っすぐ特大拠点まで線を引いて行き先を宣言する。
中央レーンに船型の巨人が沸くのも見えた。デス・フックは──キルダメージでこのゲージ差を覆す気か、刹那のシュネーヴィッツェンの処にいる。

(さあ。バレて追い立てられて殺されるのが先か、この兵士を送り届けるのが先か!)

インプルスゼーレのゲージは中腹で尽きた。
それでも、兵士たちが打ち合うのを防げたのは大きい。


(こんな時にテリトリー──!兵士弾を撃たせたら負けだ……!)

特大拠点を眼前として、9+4体に敵のシュネーヴィッツェンによるテリトリーがかかる。
吉備津が悠久森で動いていた負担は大きく、悠久のリンは玉藻に奥拠点の眼前まで詰め寄られているし吉備津は城まで走っていて有利は僅かずつ削られ──もう1mmも存在しない。

奥の兵士毎傷付けて整列を誘発し兵士弾を撃たせないドロー。
数減らしに両列を巻き込むドロー。後は敵の兵士列に飛び込み、自らを盾として兵士処理をする。
やっと9+4の兵士を処理し終えた頃にはゲージ差は捲られていた。

(デス・フックは──来ない)

来ないという事は、恐らく他の味方を殺しに行っている。
ひとりの命の分、奪われるだろうゲージ分を後10秒で獲得する道は。

(全員、入ってくれ──!)

少年が背負う、兵士達しかいない。もはや特大拠点の前に立つ敵兵士もいない。
少年自身もナイフ片手に拠点を叩くことを選ぶ。


少年の祈りは特大拠点を8割削り、ゲージ差は何方も間際に1cm以上削りあいながらも此方の有利のまま決着した。


「ありがとうですわ♪」
「ほんとありがとー!」
「礼を言う……」
「感謝するぜ!」

心から思う。色々しんどかったし負担を掛けたけれど、あの一列分は間違いなく自分の成果だ。

「たまんねえなあ!」




   *    *    *

 敵は誰一人護る選択をせずに、ゲージを稼ぐ選択をしたんだと思います。
 間違いではない、んだと思う。これで悠久奥を獲られていたら此方の負けでもあったし。
 本当に最後の最後にちょっとお役に立てて嬉しかった。
 もう1回御代わりゼーレの話はしますが、ピーター、手拭い実装されてから本当に残り1:33からの戦いに価値があって最後まで濃いのすきだよ。


 Special Thanks  ブランデー・クラスタのみなさま
          Tikinさま/闇吉備津
          むっくさま/シュネーヴィッツェン
    ハムテルくんさんさま/リン




更新日時:2023/02/06 03:49
(作成日時:2023/02/06 03:47)
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