──これは解釈の話なので、貴方が想像する"彼"と違いがあるかもしれない。
けれど、それだって『彼』だと思うから。それは間違いではなく、貴方の『彼』なのだ。
赤子の頃に乳母車から落ちて迷子となり、妖精に迎え入れられることで大人にならない少年が生まれた。
ネバーランドと夜の空を翔ける、空の守り人。永遠の国の住人──ピーター・ザ・キッド。
御伽の物語においては、「交易都市」にどこからともなく現れてその平穏を見守るようになった"永遠の少年"。
悪さをする大人を懲らしめる、大人同士の間で語られるおとぎ話。
──ネバーランドのロストボーイズは、ピーターと同じく年を取らない子供達だ。
だが、「交易都市」に住むロストボーイズと呼ばれるピーターの弟分達は違う。
「交易都市」に住まうウェンディが赤ん坊の頃からの付き合いで、今を色めく少女に育っているのを始めとして──きっと、恐らくは少年達も何時かはピーターを越えていく。
……ひとり、大人に「ならない」ピーターを置いて。
子供は、しばしば後先を考えない約束をする。
未来の事を契りあっては、大人になる過程でその約束を見失う。
現実に立ち返るその過程で置いていかれる"夢"は、"想い出"となり。
「想い出だけはずっと色褪せない、いつまでもな」
"夢"の続きを始めてくれる、そのときを、待ち続けている。
永遠に子供であるかの悪童は、永遠に大人になるものを送り出す立場である。
いつもいつも必ず後先を考えない約束をして、約束を破られる側である。
「約束は守るぜ、俺は」
それでも懲りることなく約束を結び続けるのが恐らく"彼"であろうし、軽率に永遠を語るのがピーターの姿だ。
「俺はお前の翼…ずっといつまでも、お前と一緒だ!」
それでも、神筆使いといつまでも遊べるというわけではないことも、流石に少年も感じ始めている。
「いつまでも遊べるってわけじゃないかもだけどさ」
曇り無くいまを永遠に楽しみ続ける事が出来るかの少年にとって、その予感を口にしたのは何故だろう。
今までだって少年は何度だって約束しては破られ、次の夜を待つ"夢"として置いて行かれてきた筈だ。
それでもへこたれることなく、懲りることなく少年は約束を結び、"夢"を運び、風を撒き、戦ってきた筈だ。
夢の描き手は、恐れてくれているのだろうか。終わりという別れを。
「ピーター・パン」は覚えることが苦手で、非常に忘れっぽいのだという。
永遠に独り遺され続ける立場の少年にとっては、それは必要な才能かもしれないけれど。
別れを予感させられている、今はどうだろうか。
──少年は英雄を信じた。
──そして君は、英雄を実現する術を手に入れた…後はわかるね?
かけがえのない相棒の手で英雄の域に踏み込んだ悪童は、いや。
恐れることを知ることが出来た"ピーター"だけが、かけがえのない相棒と英雄になれるのかもしれない。
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