なんかデータが見つかったのでぽいぽい~~~~。
去年仙台旅行したあたりで書いたやつあったなって、ハイキュー見てたら思い出したので掘り出しました。
その姿は、まるで海風にでも吹かれれば、たちまち消えてしまうかのようだった。
元々は日ノ本の物語に描かれた姫だったという。それが海を越えた先の物語の登場人物たちと共に過ごすというのは、我々には想像もつかないほど発見も悩みもあるのだろう。
その顔は見るからに憂いに満ちており、その心の奥にどれほど重いものを秘めているのかが容易に想像できた。
「どうしたのだ、海など眺めて。あまり海風に当たると体によくないぞ」
それを分かった上でアイアン・フックは、彼女へと声をかけた。振り向いたかぐやの手には、竹の葉で折られた小さな船が握られていた。
「この波立つ海の先には、静かな海がないものかと。そう考えておりました」
「ふむ、妙なことを考えるのだな。波が立っていない水辺があればいいのか? それならば、湖などはどうだ」
「それでは意味がございません。海でなければ、ならないのです」
「ふむ、噂に違わぬ難題だな。川や湖ではなく、海でなければならないと言うのなら、塩が必要なのか」
「かぐやの願いを叶えるため、塩にどれほどの価値がありましょう」
フックは、かぐやの見つめる水平線をしばらく眺め、ようやくその真意らしきものに気がついた。
「波立たぬ海など、俺は見たことがないな。俺のまだ知らない海域にならば、あるかも知れんが。おそらく、それでは意味がないのだろう?」
かぐやはその問いに深く頷いた。
「ええ、あなたの知らないその海には、きっとあなたの知る人はいないのでしょうから」
「そうだな」
フックはそれだけを言って、葉巻に火を点けた。煙は風上のかぐやを避けるように風に乗って薄れてゆく。
かぐやの持っている小さな船。それは日ノ本によく生えているという竹の葉で作られていた。あらゆる港を回ったフックですら見たことがないのならば、きっと日ノ本のみにしか自生しないものなのだろう。
「この竹の船が、かぐやの代わりに海を渡って遥か遠くへ旅をすれば、それを見てかぐやを思い出してくださる人がいるのでしょうかと。そんなことを考えておりました」
そう言ってかぐやが、桟橋から静かに船を浮かべた。船は、しばらくの間は浮かんでいたが、やがて大きな波に呑まれ、それきり見失ってしまった。
「やはりこの海を渡るには、いささかちっぽけすぎますね」
そう言うかぐやの表情には、隠しきれぬ諦観の色があった。
「そうだな。では、こんなものはどうだ」
そう言ってフックは懐から酒の入った小瓶を取り出した。
「まあ、美しい容器ですね。これは、器……でしょうか」
「小さな壺のようなものだ。中が透けて見えるのが好都合なのだ。手紙を入れて浮かべればいずれ誰かが拾ってくれる、という遊びが俺の国にはある」
「水に浮かべた手紙が、海を越えて届くのですか。そんなこと、考えたこともございませんでした」
かぐやがそう言って、瓶を陽の光に透かした。中に入った琥珀色の酒がゆらゆらと波を立てる。
「俺の部屋にもっと口の大きいものがある。手紙であればその方が入れやすいだろう」
「ありがとうございます。しかし、本当にこの海の果て。手紙を宛てた相手まで届くのでしょうか」
「港までは届くであろうな。誰が拾うかは、見当もつかんが」
海にも川と同じように流れがある。それが行きつく果ての陸地に魚が集まり、そこに港ができ、人が住み、街ができる。そういうものだった。だから、いずれは人のいる港にたどり着く。
「では、どこの港に流れ着くかも分からないのでしょうか」
「運に任せようではないか。故に遊びなのだ。宛名を書いておけば人を伝って届くこともあろう?」
「遊びですか。そう考えると、かぐやも楽しくなって参りました。この戦いが終わって、元の物語に帰ろうと、かぐやの手紙が海を渡って皆様に会いに行ってくれるのですね」
「ああそうだ。それに、俺も日ノ本との交易で寄ることもあるだろう。山の中まで響くほどの号砲をもって来航を知らせようではないか。火急の手紙ならば、その時に渡すといい」
言いながらフックは義手の砲を海に向けて撃ち鳴らした。
「あまり港の方々を脅かしてはいけませんよ。体の大きなあなたの船は、きっととても大きいのでしょうから」
かぐやはそう言ってくすくすと笑った。
「この戦いが終わったら、私たちは元の物語へと帰る運命……ならばもう、この戦いがいつまでも続いていたら。そんな風に考えておりました。でも、私の代わりに手紙が海を渡って旅をしてくれるのならば、それはきっと素敵なことでしょうね」
そう言ってかぐやは、桟橋に腰かけ、素足を波にさらした。
「この小さな箱庭に竹の小枝を入れて、宛名を書いた短冊をかけましたら。それはきっと届くでしょうか」
「届くかもしれんな。しかし、手紙はいいのか。何か伝えたいことがあるのだろう?」
「ええ、いいのです。言葉など届かずとも、かぐやのことを思い出してくだされば。それだけでかぐやは嬉しゅうございます」
悪い女だ。思ったが、それは言葉には出さなかった。
このゲーム、オンリーワンの操作性と、みんなでワイワイやる感じがすごく好きだしずっと続いててほしいけど、それはそれとしてこの世界が無くなるとき、キャストたちが元の世界に戻っていくとき、どんな会話をするのか永遠に妄想していたいから毎秒サービス終了して。