「ハァ〜イ!何してるの?」
気まぐれになんとなく立ち寄った港でふよふよと浮かぶナイトメアを呼び止めるシレネッタ
少しダルそうな顔をした彼の手には小さな花かんむりが
「こいつをガキに押し付けられてな」
とても小さく、ナイトメアとは正反対に白い花
それはまるで小さく灯る蝋燭のよう
「スノードロップね、花言葉は『希望』と『慰め』!」
希望と慰め
その言葉は彼の表情を暗くした
もう1人の自分、ピーターはこの町の『希望』であり、まるでそれになれない自分を『慰め』るかのような花
ちっぽけで、勇気の無い自分を蔑むような花
「けっ、バカバカしい」
ナイトメアは花かんむりを潰そうとした
が、白く細い腕がその手を止めた
「そんなことしちゃダーメ、花はどれだけ上から見下されても決してしおれたりしないわ」
そう言いながらシレネッタはナイトメアの頭ににそっと花かんむりを乗せた
フワリと乗った花は今にも消えそうな灯火のように海風でゆらゆらと揺れた
「ねっ?」
「俺は花でもなんでもねーよ」
そう言い残すとナイトメアはまたふわふわとどこかへ飛んでいった
「...俺は俺だ」
その時の喜びと悲しみが入り交じった表情はシレネッタを少し喜ばせた