*妄想二次創作物注意
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……俺には誰にも言えぬ、秘密があってな……。フン、若き日の過ちを思い出させる……。
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「小僧の手助けなどいらぬ!」
海賊の歌が戦場に鳴り響く。
--波の向こうにゃ、お宝がある。俺達には海賊の人生がお似合いさ!--
「俺の腕となり働く!」
声高らかに掲げられる歌声、列をあわせて鳴る軍靴の音。一糸乱れぬ連携から生まれる行進曲が奏で続けられる。
曲には、指揮者が必要である。屈強な兵士の後方に構え、指揮を執るは誰よりも偉丈夫な男。
--歌って壊して酒を飲み干せ!仲間共!--
「兵士どもがいるから!」
一目で身分が高い者と分かる上等な軍服。骸骨をあしらえた格調高い戦闘帽。そんな男が振るう指揮棒が平凡なものである筈がない。
端的に言えば、男には右手がなかった。右手どころか、肩から先までもが生身の物ではなく機械仕掛けの強大な腕へと変わっていた。
成人男性の胴体はあろう太さの鉄腕は、いかなるカラクリで動いているのか。意匠には総舵輪や羅針盤が見受けられ、果てに内部には折り畳み式のカトラスや火薬を用いた砲までも組み込まれている。
その重さだけでもゆうに大男3人分以上はあるだろう。余りにも異質な義腕こそが、まさしく男の「右腕」であり、易々と扱う彼こそが海賊王・アイアンフックである。
--黒ひげ赤ひげなにするものぞ、俺達には海賊の人生がお似合いさ!--
「なんでも良いけど、あんまし張り切って腰を痛めないようにしろよな、船長」
あくびまじりのやる気のない声をかけてくる小僧--ピーター・ザ・キッドが何の因果が知れないが今日のバトルのタッグであった。
だが今回こやつの出番なぞはまったく無い。なにより、宿敵相手に手を借りるなど持ってのほかだ。先ほどの言葉の通り、己が指揮する兵士達の活躍により敵の拠点は風前の灯。
このまま攻め立てれば陥落も時間の問題だろう。子供は家でミルクでも飲んでいれば良いのだ!
「さぁ行くぞ野郎ども!! 錨を上げろ!!--む?」
声を高らかに揚げたところで、戦場に歌が鳴り響いた。それは先ほどの雄々しい海賊の歌ではなく、物寂しげな女性の歌声。
寂しさの中に甘さが交じり、聴く者の心を捕えて海へと引きづりこむ、セイレーンの歌であった。
過去の記憶が甦り、全身に冷や汗が流れる。背筋に氷柱を突きこまれた、とはこういう感覚を言うのだろう。歌声は錨となって自身の体を地面へと縫い付け、動くことすらままならない。
ゆえに、気が付いた頃には体が大波へと攫われていた。
--まさか、この歌は、あの時の!?
「なっ!? 兵士どもーっ!」
味方に緊急の避難指示を出す前に体が浮き上がり、力の逃げ場所を失って制御が聞かなくなる。そしてすぐに、金槌で殴打されたかのような強烈な衝撃が全身に襲い掛かり「沈む」感覚だけが頭の中を巡る血を通して伝わってきた。
津波に飲み込まれた、そう思った矢先には肺の中の空気は衝撃で外へと押し出されてしまい、思考に必要な酸素さえも今まさに奪われようとしている。
続いて、自分の周囲にもの悲しそうな表情した白い靄のようなものが集まってきた。それはかつて共に過ごした水夫だったり、一夜を過ごした亡国の女であったり、たまたま助けてやった幼子であったり--
己の記憶に根深い者の顔を真似た水底の亡者達が、己を仲間にしようと全身へと絡みつき、重しとなって海中を目指し始めた。
--またか!新たに生を受けたこの俺様の物語を、またあの人魚が奪おうと言うのか!
段々と暗くなっていく景色の中で、瞳の内に激情の光が灯るのを感じる。
王たる俺の邪魔をするのであれば、攫い、奪い、破壊して全て皆殺しにすれば良いではないか?
セントエルモの灯、
嵐の夜の航海、
癒しの秘宝、
……俺ミズカラガ手ヲ下ス
闇の軍勢、
操舵の利かない船、
赤い瞳の人魚……!
闇ヨリ戻ッタコノ俺ハ、再開ヲ祝シテ貴様ヲ、破滅サセルノダ……!!
「……っ!……船長!大丈夫か!?」
……気が付けば体が宙に浮いて、いや誰かに抱き抱えられ空を飛んでいた。
軽い酸欠状態の頭で分かるのは、どうやら小僧が自分を助けてくれたということだ。
「拠点あと少しで壊せそうじゃん!」
銃声からして、敵に応戦してくれているのであろう。少年が激を飛ばしてくるが、体は先ほどの歌声を聴いてから言うことを聞いてくれない。
--むりだ、
手足となる兵士共は先ほどの津波で流されて居ない。自慢の右腕も動く気配がまるでなかった。
心臓は2度目の死の恐怖を予感して、うるさいぐらいに早鐘を打っている。
「この敵の海を越えるなど--」
荒波を受けることも、乗り越えることもできない船はただ、海へと沈むのみ。
「--俺にはできん」
呟いた声は、自分でも驚くほど冷静であった。
葉巻の1本でも吸いたい所だったが、さっきの波で時化ってしまっているだろう、それが残念でならなかった。
海の男が海へと散る。それは本懐なのだろう。運命とも言えるかもしれない。
だが--
「俺には、な」
七つの海を踏破した海賊王、アイアン・フックがこんなチンケな波に沈むほど『ヤワ』ではない。
今度は小僧にも聞こえる声で呟く。あの時の夜とは違い、今はこの小僧が居る。
意を察したのか少年は自分の体を地面へと降ろすと、敵の拠点へと文字通り「飛んで」行った。
--ガキが大人のメンツなんぞ、余計な事を気にするんじゃない--。
そう思い、腰を地面へと倒れこんでふと、昔の事を思い出した。
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むかし、彼--ジェームズ・フックは子供の頃、空を自由に飛ぶことが出来た。比喩ではなく、まるで鳥のように空を翔けることが出来た。
それがあくる日、彼が大人へとなっていくに従って空を飛ぶ事ができなくなってしまった。
理由は分からず、飛べなくなった晩は泣くに泣いて、次の日には勉強に勉強を重ねた。
空を飛ぶことを、冒険を忘れられなくて、船乗りになった。彼は誰よりも速く、自由に船を動かし、いつしか女王の私諒船団の長となった。
それから、ネヴァーランドに来て、空を自由に飛ぶ少年と出会い……何故か一緒にカレーを作ったりもした。
彼には誰にも言えない秘密がある。それは、彼が小僧と呼ぶ少年が、まるで若い日の自分を見ているようだと、彼が感じていることだった。
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--それは違うんだぜ!船長!
空の守り手、ピーター・ザ・キッドは1人、胸の中で仇敵の思いに応えた。
目指す先は今にも壊れそうな敵の拠点。相手兵士の頭上を飛び越え、一直線へと空を駆けぬける。
自分達がいま居る場所は夢の国ネヴァーランドではない。ゆえに空を飛ぶのにも制約があった。
彼が飛ぶためには誰かの夢、希望、願い--自分もこうありたい、という純粋な想いが必要だった。ピーターはそれを聞き届け、一緒に叶える存在である。それが意味する所はつまり、
--俺だけじゃ無理なんだ。でも俺たちなら、「お前と」なら飛べる!そんな気がするぜ!
この先にある結果は、けっして横取りではなく2人で得たものであろう。少年では大人ほど、兵士を上手く指示することができなかった。
敵の砦をここまで弱らせたたのは、大人である船長が兵士を指揮してくれたからである。
ならこれは、意地っ張りな大人と、見栄っ張りな子供が掴み取った勝利だ。
「隙ありっ!!」
一撃、追い風に身を任せた飛び蹴りで砦はあっけなく崩れ落ちた。
崩壊していく瓦礫と共に、敵の軍勢が姿を消していく。
--やったか!
--やったぜ!
地面へと偉そうにふんぞり返っている男と交差した視線の先で、そんなやり取りが確かに聞こえた気がした。
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「……とまぁクソガキを意のままに動かす為の演技だったわけだが!?」
後続の兵士たちも無事に到着し、右腕も再び動くようになった。戦闘も続けることができるだろう。
「へいへい、船長って周りに兵士がいるいないで違うよなー」
呆れた声で少年が言う。今回は小僧に助けられたようだが、次こそは自分の手であの人魚を打ち倒してみせよう。
--俺達には海賊の人生がお似合いさ!--
海賊の歌が聞こえてくる。空も飛べなくなり、夢や冒険に胸を馳せることが無くなった自分にはまさに、お似合いの歌であろう。
……順風満帆、という言葉がある。自分の操船技術に、少年の風を操る術を合わさればあるいは……
そう考えて、頭を振る。今の自分はあの頃のジェームズ・フックではなく海賊王、アイアン・フックである。
海が凪いでいようが向かい風だろうが、船を操るのが海の男であるし、なにより子憎たらしい小僧と仲良く手を組むのはまっぴらごめんであった。
「……風が出てきたな、帆を張れ!!」
兵士達に怒号を飛ばし、隊列を整える。この物語はあの時と同じストーリーではない。ならば先に待ち受ける結末も、違うものとなるだろう。
復讐に燃える男、アイアン・フック。
一陣の風を背に受け、過去の恐怖との対峙へと航路を向け、大きく舵を取り始めた。
※筆者近況
・素敵な原作は鈴木玖さまのわんだーらんど4コマうぉーず第10話をどうぞ。
・一作目の前回と違い、元の4コマのスピード感なくだらだら長いものを書いてしまいすいませんでした…削ったつもりなんですけど船長が動いてしまって…。
・大聖回の11話を書くと言ったな、あれは嘘だ。書きたいけど。「そのバストは豊満であった」とか書いちゃいそう。アバーッ!
・CR25から1万ページ燃やしました。基礎からみっちり勉強しなおしてきます。
・1の初期に鶴織大聖が居たそうですけど絹ふんどし大聖も中々。
・ドロー火力の次に「MP」か「スピード」か悩み所さん。色んな人の大聖見ると、最低でもスピード値+5メモリを出せる状態のビルドが多いんですが…。
・フックとドルミに勝てるビジョンが見えません…ギディで序盤折りして延々と裏どりのが一番勝率が良いという。
・なぜドルミのスピード上げたし。
それではまたわーんだーらーん。