「──さっき4人揃わなかったからなあ」
時期は舞闘会の初日の真っただ中、しかしながら初日に1300まで上り詰め──獲れるかもしれないROOKを手放したくはないと、少年は新兵を伴って物語の旅に出た。ひとつ前ではマリーと組んだが、最大4人迄誘う"みんなで"の方で4人揃わないとなると心細い。
「まァ、2人なら誰か一人居れば──お。──お?」
アナスンからマッチングの報告。開かれた作戦会議の頁で見かけたのは、珠の連なる筆。
待ち時間、呑気に茉莉花茶に口付けていた悪童は噴出しそうになった。
「マジか──」
ある三国時代の太守の名を冠するその人物の、供たる新兵の名がその人物の守護した都市の名を冠していることに謎の感慨まで抱きながら。
「ヨーソロー……」
「よろしく頼むぜ」
相方はデス・フック。相対するヴィランはジャバウォック。連れ従えるは黒き錫の兵隊──歪な虹色のジャバウォックを睨みながら、旅支度を整える。
「右ニ行ク」
「了解、じゃ、目標は此処だな」
先ずはヴィランの防御を削る事から。
先日の3ヴィランの世界では影響しないらしいが、二手に別れて敵拠点を滅ぼすのはヤツらの防壁を削る為に必要な工程だ。
「へっへっへっへ、悪くはねえなあ」
筆を見た瞬間は驚きしかなかったが、悪童も三国志は好きだ。
こんな珍しい処で最上位の人間に出会えることも、何処となく喜びを隠せない。
何処となく上機嫌に呟いた処に、初めて聞く──お気に入りのナイトメアの台詞と同じ言葉が響いて少年は目を丸くした。
「行クトシヨウ……」
「──!行くとしようか?」
まさか同じ誘いの言葉をアナザー同士、デス・フック(R:そいつ)も持っていたというのか。
知らなかった驚きと、同じ言葉を共有する喜びと。それを、カスタムチャットに入れてくれているという嬉しさと。
「へへへ……♪」
「フフフ……万全ダ……」
嗚呼、なんて良い夜だろう。この一時の休息を終えたら、彼は舞闘会に戻るのかもしれない。
そんなに長い時間にはならないだろう。それでもこの夜を愛しく思い、夜を駆けた。
* * *
ナイトメアの「行くとしようか」、好きなんですけど。デス・フックもあるんですね。
す、好き────ッ!!!!
Special Thanks 韓玄さま/デス・フック