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時間の使い方

by
烏兎@Volksages
烏兎@Volksages
俺は悪童使いであるけれど、マリクを見るとドロシィに乗りたくなる。
アタッカーに合うサポーターの話は何時だって話の種として議論されているが、マリクにはシレネッタやドロシィ、メイディが合うんじゃないかなと思っている悪童である。
勿論、誰よりも自由で誰にも束縛されない自由の妖精ピーター・ザ・キッドを、王に辿り着くために誰よりも深き欲望とすべてを望むことを強いられていたマリクが追い求めて籠の小鳥にしようとする構図は中々にエモーショナルな構図な気がしてならねえけど──って、俺は何の話をしているんだ。
創作上の相性ではなく、味方の組み合わせ上の相性として──野良のマリクという前提だと、魔神化の際に体力が十分であるという保証が必ずあるというわけではない。その際に回復補助が出来るというのはやはり強みに感じて──

「あ~ 結果としてミラーか~ 嫌やけど対面銅やし……いやもっといやや……」

相方は名前を知っているルビーだった。ルビーであることを理解しながらキャストを選べたのは舞踏会としては大きい。
端のふたりは金筆の大聖と──恐らく乗れるファイターが無かったのだろう、正直その決断は正しいと思う──金筆のミクサ。彼らの対面はルビーのシュネーヴィッツェンとブロンズのリンで、成長キャストである大聖が格上のシュネーヴィッツェンの相手をしなければならないという時点で相応に厳しい。大聖自身も、余り自信が無さそうな面持ちでレーンを見遣っていた。

(勝たなならんのはうちらなんやけどな──同キャスト対面は腕が問われてるようでなあ……)

アタッカーの技量なども絡むことがあるからファイター程そうはならないのだが。
とはいえ、勝たなきゃいけないのは自分達である。深いため息をついてから顔を上げた。






悠久側からの出発、対面ジョーカーがちらりと眼前に見えた。
対面ドロシィは刹那側から出たらしく、横からマリクに肉薄しているのが見える。
同格や格上相手であれば、アタッカーはアタッカーが、サポーターはサポーターが見合った方が事故りにくくて都合は良い──のだけれど。

(此処は相棒が咎めてくれることを信じて咎められん程度に兵士処理した方が良さそうやな)

味方の最初の兵士列が無傷であることが見えるということ。
僅かにマリクの体力が削られているのが見えたということ。
其れは即ち、対面のドロシィは"マリクをストレートショットで咎める"という選択をしたことがなんとなく想像が付く。

(基本は兵士の押し付け合いやから)

向こうはドロシィが兵士処理をしないなら、ジョーカーがせざるを得ない状況に陥るはずだ。
横合いから構えたジョーカーに向けて銃弾を撃ち込むも射程が足りない。
放たれたドローは兵士列から外れるようにステップを踏んで辛うじて避けた。
牽制を重視したか、兵士の端一体だけを掠めて自身の横をドローがすり抜けていく。

「横合い出てくるのはええけど兵士列とおんなじ高さじゃ当たるで!」

兵士処理をしないのであれば、向こうの選択は此方をダウンで咎める路だろう。
兵士列に重なって横に出てこようとしたジョーカーにブリキの兵士をぶつけてよろけさせた隙に兵士列の裏へと引っ込んだ。

兵士1列分くらいの優位だろうか。対面ドロシィが突貫を諦めて戻ってきたあたりでお互いのレベル2が訪れた。






尊大なる我欲の解禁に、ライオンの勇気を合わせる。

(この対面のジョーカー、何が何でも自分で兵士処理はしたくあらへんのやな)

クロスドローとしてしか使えない黒い光弾が抜けていく。上のアタッカーとしては正しい姿なのかもしれない。
それを選んでいるのが銀筆のジョーカーというのが違和感ではあるが、兵士の進軍を阻止して来ないのは現状は都合がよい。
マリクはストレートショットで大兵士を狙っており、対面のドロシィはライオンに続けてブリキを発動させる選択を選んだ。
敵兵士がマリクによって整列を強制される中、迫る味方兵士の兵士弾が敵軍兵士に放たれる。

「確かにバフは大事やけど、此処でうちがブリキ打たへんかったら一手分うちらが先にいくで?」

この戦場はターンバトルではないけれど、時間の使い方は試合の明暗を分ける。
兵士達が開けた射線を突き抜けて、マリクの光弾が敵ドロシィを射貫く。
兵士達が塞ぐ射線のその向こうから、ドロシィの銃弾がジョーカーをあしらう。


(うち、相棒さんの期待には応えられてるやろか?)


ちらりとマリクの横顔を伺うもヴェールの下はうかがい知れず。
手前拠点を奪う為の詰めは、未だもう少し──






   *   *   *
  
  順当に筆の差と言えばそうなのだけれど、やり取りを繰り返し繰り返し見る度に
  時間の使い方の差が筆の差であったのだ、と感じる次第の最序盤であったことをどうしても描きたかった。
  実際にはこの後マリクが横槍に出掛けたのもあり、中央手前の奪取には少し時間をかけますが──
  
  金筆ミクサちゃんがファイター使えないからミクサちゃん乗るのは個人的には大アリだと思う。
  ミクサちゃんだから出来る事ではあるけれど……後対面リンがメテオ積んでたから色々台無しだったけど……
  
  
  Special Thanks    高嶺の花子さん/マリク
作成日時:2023/02/12 01:56
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