この戦場はチームゲージの削り合い。
キャストキルによるチームゲージのダメージは、2%。
一方、拠点の保有するチームゲージは小拠点──テントでも9%。
通常拠点──手前拠点で18%だ。大拠点──奥拠点は25%も保有しているから、度々奥を折られたら逆側の奥を折れ、なんて言われる事もあるし……他のレーンの何処の手前が取れなくても33%チームゲージを保有する特大拠点とキルダメで勝利する試合もある。
……逆に言えば、ピーターがチームゲージを稼ぐ手段はそう多くない。
中央手前を奪った後は──寧ろ差を拡げられない為、自身の中央手前を護り続ける事が精いっぱいのお務めである位なほどに。
その試合はFAAS。悠久は端アタッカーの逆横槍が来ないだけ有難いというレベルで劣勢続き。
刹那は邪道丸が複数回デスしており、対面がアイアン・フックであることもあり厳しい戦場が続いている。
不幸中の幸いは刹那レーンがほぼ常に2:2しているかのような戦況、ピーターが護る中央の手前拠点が残っているという状況だった。
チームゲージは負けている。中央手前を奪われたら負けから負け確になってしまうといった状況だろうか。
傷を癒す為に一時帰城していたピーターは、風を纏ってエアウォークで飛び込みゼーレを展開する事で辛うじて手前拠点を護り切る。
「ふ、ふう……」
1:22。ピーターにとって意識する価値のあるその数字は、インプルスゼーレのリチャージか戻ってくる時間だ。
其れが無かったら手前拠点を護り切れたか怪しかったかもしれない。ピーターは一息付いて眼前、盤面を見上げた。
「──あれ」
対面がいない。アタッカーがずっと刹那で2:2を続けているのは知っているけれど──
流れるキルログ。響く通信越しの自分の声。いや、これは俺の声ではなくて──
「聞こえるかよ、ピーター!」
ナイトメア・キッド。
この戦場で俺の相方を務める、執行者のピーター・パン。アウトローの側から楽園を護る、もうひとりの悪童。
「今ようやっとアイアン・フックを獲った!なんか知らねえが一緒にエピーヌも居やがったから獲っておいた!
敵の中央アタッカーは俺にやらせろ──ピーター、お前は。分かるな」
アタッカーが来ない。サポーターはやられていて盤上に居ない。
それは中央レーナーであるピーターにとって数少ない、それでいて大きなチャンス。
何よりピーターにはいま、戻ってきたばかり──展開仕立てのゼーレがある。
「──感謝するぜ」
さあ、風を纏え。何処までも突き進め。
刹那手前(18%)と悠久手前(9%)の分は、大体特大拠点(33%)といまのナイトメアのふたつのキル(2%)で取り戻せる。実際には死んだのがフックとエピーヌで、アタッカーをナイトメアが咎めてくれているなら邪道丸は刹那の手前を奪ってくれる事だろう。
(負け分を取り返せる。捲れる、勝てるかもしれない──ッ!)
邪魔する兵士をゼーレの波が吹き散らしながら、特大拠点へ駆け抜ける。
エピーヌというキャストはシステム上、復帰直後では兵士処理スキル"微睡みの粉"では兵士処理出来ない事も多い。
果てにはエアウォークの無敵を使って復帰してきたエピーヌの粉を顔面ブロックする羽目になった。
何時もこれ使う俺の視界が凄いんだけど有用だから仕方がない──
『敵軍特大拠点、破壊成功だ!』
響くアナウンス。少し遠くで、目論見通り刹那の手前を奪ったアナウンスも流れてきた。
「……ま、お前もよくやったんじゃないか?」
「素直じゃねえの、ナイトメア。……や、あそこのキルサンキュー」
1:22。未だチャンスが眠っていた──。
兵士には進軍スピードというものがあるから、何時までもチャンスが存在するとは限らないけれど。
それでも、最後まで機会が眠っているということは良い時代になったものだと思わされるのである。
(手ぬぐいいつ下方されるのかな)
正直元の時代に帰れるか不安でならないが。
* * *
元動画が無い為、色々記憶頼り&捏造。
でも実際ちょっと端に寄ったエピーヌがフックと一緒にキルされたことですべてが変わった試合でした。
ナイトメアの爆発力もあるし、フリーレーンをゼーレで上げられたことがデカかったのもありましたね……
手拭い下方何時?元の時代に戻って戦えるか不安だからいっそさっさと来てくれない????
Special Thanks ポッスンさま/ナイトメア・キッド
水瀬いのりガチ勢さま/邪道丸 +リザルト画像の提供など
ジン・スペンサーさま/拠点攻撃力・拠点破壊・城殴りに関する基礎知識
https://wonder-club.jp/posts/158628