それでも目の前の敵を殺りたい、というのは哀れアタッカーの性なのかもしれない。
「まあまあ中央がキツそうだし、これで務めは果たせたかにゃ」
対面を蹴飛ばして、奥拠点を陥落させる。さあ逃げるが勝ち。
帰城でもいいけれど、体力と居場所を考えると無理やり張り付かれたら怖いかも。
だったらもう、無理やり逃げちゃおう。エルガーナーゲルでお相手さんを吹き飛ばし、「おにさん、こちら!」で瞬間移動。
「わっ!?」「おわっ!?」
「ごきげんよう」
辿り着いたのは逆側のレーンの相棒のシュネーヴッツェンの処。
さっきナイトメアからキルを奪っちゃってしょげてた顔が可愛いけれど、まあまあ真面目な問題かも。
とん、と背中を押して先を促す。刹那のレーンは手前拠点が両方とも健在だ。挽回は拠点奪取でお願いしよう。
「帰るのか」
「うん」
「了解、中央戻んぜ」
ナイトメアの方はというと、此方も中央手前の奪取に向かうよと霞のように姿を消した。
きっと永遠を刹那に縮めるエアウォークで、跳び越えていったのかな。
こっちの中央手前は無傷だから奪えればアドバンテージとしては高そうだね。
「じゃ、向こうで挨拶してこよ」
悠久は手前がお互いに折れていて、いまさっき奥拠点を奪ったばかりの高さだから……
このままちょっと遊んで行っても良いんだけど。直ぐ帰っちゃおう、と少女は横着をした。
その場で帰城魔法を唱える。だって、このレーンのレーナーは相方のシュネーヴィッツェンちゃんだもの。
彼女を止めないと刹那の手前は折られてしまう。だからね、だから──
「これで決める!」
「えっ?」
一発の銃弾。「あっ」って相棒がこぼした声が聞こえた気がしたけれど、魔法はキャンセル不可能なので。
「に"ャ────ッ!?」
「拠点撃破ァ!!!!あ、猫ちゃん死んでる……ごめんね?」
「あ────!!!!そっち行くと思ってなかっ、あ~~~~~~~~~~~~!!!申し訳ねェ!」
手前拠点を奪取してから振り返って猫の死を確認して合掌する相棒。
中央拠点を護る為攻防に参加するだろうと目を外していたら味方がやられて半ギレになって追うも、其処に自身もHOLD UPを喰らい仕留めきれずキレ散らかしているのか悔しいのか申し訳ないのかわからないような謝罪の様相になるナイトメア。
ナイトメアがジョーカーを仕留められなかったのは非常に残念ではあれど、この猫の死、盤上判断としては味方の利でしかないのが切なさに拍車をかける。経験値差があったわけでもなく、ジョーカーにキルダメも然程盛られておらず、シャドウ・アリスがHOLD UPで拘束されている数秒は安全にシュネーヴィッツェンがレーンを上げ刹那の手前拠点を奪えるだけの時間でもあり──
「……ゆ、悠久に帰るね……」
序でに言うと復帰して帰る頃合いになってようやっと悠久もレーンが中腹まで押し戻されているくらいであった。
哀しい猫、有利の為のよくわからない犠牲になったのだ……。
「まあまあ、悠久貫通してるだけで仕事してるから。ね?」
「そう気を落とすな。後で何か綺麗なものでもわけてやろうではないか」
「う、うん……」
複雑な気持ちで、猫はレーンに帰るのであった。
* * *
シュネちゃんガンスルーしてこっちにHOLDされると思ってなかったんです。
精々SS位だと思ってたんです、漢帰城なのが悪いんじゃってのはその通りなんですゆるして。
最初は(自分を追わざるを得ないだろうと思って)ジョーカースルーする気満々で中央行ったメアくんが
その行動にびっくりして戻ってくる処も個人的ハイライト。あっちもあっちで予想外だったんだろうなあ。
個人的にこの猫HOLD UPで死ぬ分には残念ながらアドですらあるのでほっといても良かったまでありません?
Special Thanks 覚醒した三女さま/ナイトメア・キッド
GORIさま/アイアン・フック
☆EM☆さま/シュネーヴィッツェン