少年が学んでいるファイターがシャドウ・アリスしかないのは、少年のプレイ回数からしたら何もそう、おかしい話ではない。
だから少年が3Fを望むならまず少年がファイターに乗らなくてはならないが、一番悩むのはそう──
天々座 理世:第一希望「シャドウ・アリス」
「……」
そのシャドウ・アリスがランカーの第一希望として出てきたり、自分より格上のシャドウ・アリス使いが現れた時だ。
以前どうしても少年がファイターを望みすぎて、シャドウ・アリスのランカーからあの子を奪ってしまったことがあった。
苦戦していたランカーの姿が少年は忘れられないでいるし、故に少年は躊躇っていた。
(対面、良く知ってるしお世話になってるし組んだこともあるエピーヌと闇吉備津……)
正直足が竦んだ。
未だ隙も多く脇も甘い少年に、睡眠効果を持つ兵士処理手段である微睡みの粉を操るエピーヌ。
それで強化された鬼断ち、懐へと刃を振りかざして突っ込んでくるドロー挙動、当たれば命を刈り取られるコンボが待ち受けるスタンの一喝のすべてを兼ね備えた闇吉備津。
しかもその両名が組んだことも教授を受けたこともある身内──弱い処を理解されている、となると。
ピーターは間違いなく、このパーティの一番脆い処だった。もはや運命づけられていると言ってもいい。
「俺──」
「良いわ、このマァトの威を貸してあげる」
どうしたらいい。不安に実桜の瞳を潤ませながら顔を上げた少年の声を遮る様に、かの神筆使いが選んだのは第一希望ではなく。
「真面目にやると決めただけよ、好きにすればいいんじゃない」
「そう気にするなて~、あくまでわっちらの判断じゃからのお」
かの神筆使いのマァトはそれが当然のことのようにそっぽを向き、その相棒の玉藻が微笑ましそうに笑うのを見た。
ピーターは最後のひとりを見上げた。誰よりも熱い心を、その雪女の身に秘めて──ピーターの背を叩く。
「中央で耐えられるわね?──端は必ず勝つわ、彼女達だもの」
戦場にて。
ルビーのサンドリヨンを散る秋の薫の下に沈めながら、玉藻はひとりごちた。
「すまぬのう、わっちらそう望まれておるでの。
勝つために手段を選んではおれんのじゃ。例えそれがハメじゃろうとしても、のお」
Special Thanks
天々座 理世さま/マァト
深琴さま/玉藻
アウトロウ/深雪乃