戦場において、一番飛び交うのは【警告】のやり取り。
特に中央のサポーターやアタッカーから発されるそれは、相手のアタッカーの足取りを掴む重要な手段のひとつ。
他のレーンに干渉し、戦場を書き換えるアタッカーの役割に抵抗する最たる手段といってもいい。
勿論、帰路に付くサポーターを狙うファイターや端のアタッカーもいるもので【警告】を鳴らすべきは何も敵のアタッカー相手と限らないのだが──
これは、【警告】のやり取りを通じた連携の小噺。
「付き添おう、だなんて言うんだもの。此処は信じて任せるのも務めってやつよね。
うんうん、流石シレネッタ(R:わたし)。偉いわ!」
戦場はAASS。ファイターが居ない今戦場は、アタッカーとサポーターの内一人ずつが本来ファイターが務めるレーンを代わりに務めなくてはならない。刹那は妲己が行く事になるだろう。悠久は、と考えたシレネッタは──隣で期待に目を輝かせる多々良を見てから自ら申し出た。
サポーターの端レーンの近況は其処まで大きく変わらない日々が続いている。
強いて言うなら、ここ暫くの低レベルドロー強化アシストの増加はシレネッタが端で戦うに置いては間違いなく追い風だ。
サポーターの相性は、ファイター程変化を叫ばれることはなく──穏やかな海のような状況が続いている。
……実際の戦闘は血反吐を吐くような泥沼なんだけれど。
サポーターって体力が少ない割に、近況はみんな火力だけ与えられてしまったから仕方ないね。
「今日も賑やかにいきましょうっ」
そんな中でシレネッタの立ち位置は比較的恵まれていると言っていい。
端であれば、MPは基本全て自分の為に使っていいと言っても過言ではないのだ。
レベル2から自己回復が可能である、というだけで強気に出れるだけの強みはある。
(ドローショットもストレートショットもダウンさせられないから、
介入がしんどいのはメロウとおんなじなんだけどね)
対面のピーターに横合いから弾幕を差し込まれ、溜まった兵士を押し付けられそうになった時はひやっとしたけれど。
お返しにぱしゃぱしゃと風邪を引きそうなくらい水をかけてやった処、くるりと背中を向けて引き返す姿が見えた。
空中で踏ん張る姿が見える。中央が五分より押し上げているのを見て、シレネッタは声を張り上げた。
「──あっ、気を付けてよ!あいつ、跳んで帰るつもり!」
返事はなかったが、この声に価値があることをシレネッタは信じていた。
「──気を付けてよ!」
悠久側から【警告】の声。照らされたミニマップからピーターの影が消える。
ジョーカーはちらりと振り返った。多々良が何も答えることなく、唯しかし迷うことなく数歩踏み出す。
庇護の領域が森の入り口を捉える。これならば中央から敵アタッカーに咎められる可能性も減るだろう。
地に手を付く。一瞬だけ、ジョーカーの世界の異世界が足元に顕現する。
此方は森が壁であろうと、彼方の異界が繋がれば──
「──捉えてみせよう」
果たしてその先は不思議の森の中、視界の先にはびしょぬれの悪童。
「──なっ」
「……ふ、悪いが悪戯っ子はお仕置きの時間だ」
黒色の森に少年の悲鳴が響いた。
「いぇーい♪」
「助かったよ」
短い通信上のハイタッチ。
刹那から今度はナイトメアが森に飛び込んだとの連絡が飛ぶ。
可能なら同じように咎めたい。ジョーカーは走り出す。
もうすぐエンドルフィンが解禁される頃、声を上げた妲己を癒してあげようとシレネッタもまた、ポータルへと歩み出した。
試合はまだまだ──これからだ。
*実際のピーターは「エアウォーク」で帰らず、
歩いて森に入り角で帰城しようとしていました(レベル3になっていなかったのもあり)
このテキストではどちらともとれる表現にしております。
Special Thanks
gαмι/§Θ 様(ジョーカー)
【wlw】視野の広さが段違いだった試合【ジョーカー/その9】 https://youtu.be/AGxZkXtvgrY
Wonderland Wars(ワンダーランド ウォーズ)@wiki
https://w.atwiki.jp/wlws/