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「誰かの入り江」

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人生の分岐点・\( ^∀^ )/
人生の分岐点・\( ^∀^ )/
ザ、ザーン...ザ、ザーン.........
と、一定のリズムを取る波はまるで一種の音楽器
しかし人の心を癒すこの波も幾年も幾年も時間をかければこのような素晴らしい入り江を形成する
人が踏み入る事は不可能と思われるほど断崖絶壁に囲まれたこの入り江はまるで異世界のよう

その砂浜で1人の少年が無邪気に釣竿を振っていた
「いやぁ大漁、大漁!ここはまるで竜宮城じゃのう!」
しかし、その容姿を裏切るかのように口調はまるで老人のよう
その彼の傍らには魚が大量に入ったカゴが転がっていた
「オトと海を宛もなくめぐっておれば、まさかこんな入り江を見つけるとはのう
ここはワシらだけの秘密の竜宮城じゃ!」

すると彼の垂らしていた釣り針が何度目だろうか、また水中に引き込まれた
「また来おった!ワシの腕を見くびって貰っちゃあ困るぞ!」
グイ、グイ、と少年は、極度にしなる釣竿を必死に引く
その反対に糸はひっきりなしにグイ、グイ、と水中へと帰る
この戦いを制したのはどちらでもなかった
唐突に糸が緩んだのだ
彼はあわや盛大に尻もちをつくところだったがすんでのところで踏みとどまった
「な、なんじゃあ!?」

「なんじゃあじゃないわよ
あまり私の友達をいじめないであげて、火遠理」

釣り糸があったであろう場所辺りから美しい声と共にこれまた美しい人の顔が出てきた
「確か...めろう、とか言ったかの?
お主の友人とは知らなかった、すまぬ」
どうやら2人は顔見知りらしい
彼は謝りながらカゴに入った魚を逃がした
更新日時:2022/05/01 11:12
(作成日時:2020/11/28 08:55)
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